2010.04.11

アメリカフードバンク事情 

第一回:Farm to Family(“畑から家庭へ”)

フードバンクの本場アメリカにおける食料支援周辺の事情を連載でご紹介していきます。第一回目は、農産物を積極的に活用するカリフォルニアのフードバンクの事例をご紹介します。

カリフォルニアのフードバンクが連帯して、農家からの新鮮な野菜や果物を安定的に供給するシステムを構築しています。この連帯は、カリフォルニアフードバンク連盟(CAFB, California Association of Food Banks) と呼ばれ、都市部など担当地域に農家が少ないフードバンクなどにも安定的に野菜・果物を提供できるようにしています。


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CAFBでは、2009年の農産品の総配布量を約36,000トンと見積もっています。(写真提供:CAFB)

このプログラムがスタートした背景としては、食品価格の高騰、失業率の増加があり、また同時にこれまでに缶詰やシリアルなどの加工食品を提供してくれていた食品メーカーが、サプライ・チェーン・マネジメントの一定の成果により、余剰になる食品が減り、結果としてフードバンクに対する食品寄贈も減ってきたというのがあります。フードバンクが提供できる食品の量と実際にワーキングプア世帯などに必要とされる食品の量の間の格差が広がり、それではと、全米各地のフードバンクで農家から多めに生産されたために市場性を失った野菜や果物を寄付してもらおうという動きが高まりました。そうした流れから、カリフォルニアでは農産品が非常に豊かに生産されているにも関わらず貧困層に充分にそうした食品が渡っていないことに着目して、2006年にCAFBがFarm to Family プログラム(“畑から家庭へ”プログラム)を始めました。

大まかな流れとしては、複数の農家において市場性のない農産物を収穫し(収穫にかかる人件費はフードバンクで負担する場合と農家が負担する場合がある)、包装工場にて仕分けされます。仕分けされたものは通常農家から寄贈としてフードバンクに提供されるか、キロあたり数円程度の格安で提供されます。農家もフードバンクを通じて生活が苦しい層を助けることに喜びを感じています。生産農家Van Groningen & Sons, Inc.のダン・バン・グロニンゲンさんは、収穫せずに畑に残した農産品のことを考えます。Farm to Familyプログラムがあるおかげで、「今はそうした農産品にも行くべき家があるので、収穫できます。支援を必要とする家庭にこうした食品が届けられるというのはうれしいものです。」¹

Farm to Family プログラムでは、週にトラック約50台分の農産物がカリフォルニア各地のフードバンクに届きます。トラックでは、巨大な容器にいれて運搬され、フードバンク倉庫にてボランティアがそれらを袋に仕分けし、パントリー、炊き出しなどに配送されていきます。仕組みは一見シンプルですが、このプログラムは多くの人の参加がなくては成り立ちません。Farm to Family プログラムの創始者でサンフランシスコ・フードバンクの理事でもあるゲイリー・マックスワージーさんは、生鮮野菜を配給するプログラムに必要な条件として、「冷蔵スペース、また食品を仕分けするボランティアも必要です。さらに(引き取ってから)2、3日以内に配送できる能力もなければいけません」と言います。

CAFBの積極的な活動により、サンフランシスコ・フードバンクでは、取り扱い食料の約60パーセントが、アラミダ・カウンティー・コミュニティー・フードバンクでは、約50パーセントが野菜・果物となりました。5年前には、野菜・果物の占める割合は10パーセント以下だったことを考えると、驚くべき変化です。


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生鮮野菜や果物はこのようなパントリーで手渡されます。また、健康的な食生活に関するリーフレットも配布されています。(写真提供:CAFB)

アメリカでは貧困地域の貧しい食生活が、高い肥満率につながっていると言われています 。² そしてそれは、小さな子供たちにも及んでいます。このプログラムは、家計の苦しい家庭を経済的に助けるだけでなく、個人の健康面でも、栄養価の高い野菜や果物をきちんと食べられるようにする、という意味合いがあるのだと強く感じました。ロサンゼルス・リージョナル・フードバンクの事務局長マイケル・フラッドさんは、このプログラムは栄養価の高い食品をクライアントに届ける点で重要だと言います。クライアントは、「こうした食品へのアクセスが無い、もしくは食費にかける予算が充分なく手が出せない」のです。配給センターでインタビューを受けた女性のコメント「(このプログラムのおかげで)子供たちに健康的な食べ物をもっとあげられます」

全米フードバンクのネットワーク組織Feeding Americaの理事長であるビッキー・エスカラさんは、「充分に配給されていない生鮮品がほぼ無限に存在する」と述べ、画期的なソリューションとしてのFarm to Family プログラムを賞賛します。³  

日本の2HJにとって、農産品についてCAFBのような広範なネットワークはこれから先のことですが、このFarm to Family プログラムの存在が将来こうしたシステムを構築しようと思わせてくれます。


ご意見・ご感想をお寄せください。info@2hj.org にメールを送ってください。また、2HJの最新情報についてTwitterの2HJのアカウント(@2ndharvestjapan)もチェックしてください。

参考
¹ インタビューの引用は、特定されている場合以外は、CAFBのウェブサイトビデオからです
² American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 79, No. 1, 6-16, January 2004
³ The New York Times, California’s Food Banks Go Locavore


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2010.03.13

新事務局長が誕生しました!

セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)では、渉外・配送スタッフの大竹正寛をこの度、新事務局長に選任しました!新事務局長として、これからの2HJの中で大事な役割を担っていく大竹に、抱負を語ってもらいました。

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中央が新事務局長大竹。国際フードバンク研修会にて。

事務局長就任が決まってどう感じていますか?
「まだ全然実感ないです(笑)。当分は実質的な業務も変わらないですし。」

そうですか。では、現在はどんな仕事が中心になっていますか?
「食品の引き取り、配送、食品企業との交渉がメインですね。去年だけでも、2HJが新規に食品提供の同意書を取り交わした企業は88社になります。一日一件は問い合わせが来ていますし。

それ以外には、中学校や高校などに出向いて生徒に2HJやフードバンクの活動について話をしたりします。また、Eco Products などのイベントへの出展も担当していて、フードバンクに対する認知度を上げるために努力しています。」

やはり認知度の向上が重要ですか?
「食品企業に限らず、一般の人たちの間でのフードバンクの認知度も大事だと思いますし、食品企業などにも、プロセスを知ってもらって、理解してもらって、賛同してもらって、共感してもらえば、より良い食品提供に結びつくと思うんです。そのためには、イベントやメディアを通じた情報発信が大事だと思います。」

認知向上の結果として、どういったことを期待していますか?
「5年後、10年後に各都道府県にフードバンクがある、というのが理想だと思います。でも今は、地域によってまだフードバンクに対する認知度にばらつきがある。各地域でフードバンク活動をやりたいという人は潜在的にいると思います。そうした人たちが活動しやすいように地元の認知を上げていく必要あると思うんです。

それと平行して、全国規模の食品企業から食品の提供を受けるための仕組みも大事です。地域によっては提供がない種類の食品をネットワークを通じてフードバンク同士が提供できるような補完的な関係をつくることが大事だと。そこに、フードバンクの全国ネットワークの必要性があると感じています。」

ボランティアや寄付をくれている方たちへの一言を
「無償で多くのものを提供していただいていて、本当に感謝でしかないです。2HJは2HJだけで動いているわけではなくて、多くの方の期待を背負っているというか、責任を感じます。2HJが日本のフードバンクという舞台で果たす役割はすごく大きいと思うんですよ。そこを使命感をもってやらないといけないなと思っています。」

ありがとうございました。

新しい事務局長が就任し、2HJも変わっていきます。しかし、これからも「すべての人に食べ物を」という理念の下、もったいない食品を少しでも多く受け取り、必要とする人たちに少しでも多く届けるという目標は変わりません。アメリカで始まったフードバンク活動ですが、ものを大事にし「お互いさま」と他人を思いやる文化の中で日本のフードバンクがより大きく育つように多くの皆さまに2HJをこれからも温かくご支援いただければと思います。

大竹は、アメリカの国際フードバンク団体、グローバル・フードバンキング・ネットワーク(GFN)がテキサスのサンアントニオで主催する研修会に3月1日~5日にかけて参加してきました。世界23カ国からフードバンク代表者が集まっての研修の模様は大竹が後日皆さまに報告しますので、楽しみにしていてください。


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チャールズ・マクジルトンの米国転居に関するお知らせ

 

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2008.11.10

2HJの4トントラックがついに納車

待ちに待った4トントラックがついに2HJに納車されました!

今回もニュースキンジャパンからの寄付金がトラック購入費用に充てられました。ニュースキンジャパンの皆さまに心から感謝申し上げます。
早速、10月18日には、このトラックで名古屋まで配送に行きました。愛知県・三重県ではセカンドハーベスト名古屋と協力して各地の施設・団体に食料品が届けられました。
これまで一度に2トン以下の食品の配送をしていたところをこのトラックでは3トン以上の食品を配送することができます。すなわち、より多くの人たちにより効率よく食品を届けることができるようになったということです。

その他にもベビーフードの寄贈や大型冷蔵庫の寄贈などがあり、それらの引き取りにも大活躍しています。

2HJでは、普段から食料支援を最も必要としているのは、低所得の母子家庭世帯や高齢者世帯だと考えています。それらの支援施設に必ずしも帰属していないが支援を必要としている人たちのための食料支援システムの構築という大きな目標に向けて大きく一歩前進できたと思います。

この4トントラックは、路上においてとても目立ちます。もし、あなたが道でこのトラックを見かけた際には運転手に向けて是非大きく手を振ってあげてください!

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2HJの新型4トントラック

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4トントラックの積み込み風景

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2008.04.21

2HJ大根収穫イベント: 農場での収穫から提供

引き抜いて葉をカット、根をカット。
列に並べる。
引き抜いて葉をカット、根をカット。
列に並べる。

食品工場の流れ作業のようなこの工程、実は、2月24日の日曜日、2HJの呼びかけに答えた約20人のボランティアが行った、農場での大根収穫作業のこと。約10トンの収穫が可能な畑から2トンを超える量の大根を収穫し、わずか3日後の27日までには、すべての大根を2HJの受給者に配給したのです!

daikon in field

翌週の日曜日、3月2日には、小学校から高校までの子供たち(と指導スタッフ)が畑に入り、さらに1.5トン以上を収穫しました。参加したのは2HJが食品を提供している複数の養護施設の子供たちで、自分の手で収穫し、とれたてを新鮮なまま食べるという貴重な体験を楽しんでいました。一方、施設のスタッフは、それぞれの施設での食事の材料に、たくさんの大根を持ち帰りました。

boxing daikon

2HJが、セカンドハーベストというその名のとおり、寄付される野菜のハーベスト(収穫)を行うのは、設立以来これが初めてのことでした。今年は霜が早く降りたため、大根の収穫期間が短縮され、全てを収穫できないまま整地の時期を迎えるところでしたが、幸い、良質でおいしい大根が連なる畑の一画を2HJのために提供してもらうことができました。

daikon line

2HJの理事長チャールズ・E・マクジルトンは、昔を振り返り、「このようなイベントを実現させたいと常々思っていた」と言います。その考えが実現に向けて動き出したのは、2HJスタッフの配島が、2HJに参加する前、宮崎県の農家で働いていた時に出会った唐沢氏(今回のイベントでの農場側の主催者)と再び交流を始めたことがきっかけでした。配島が東京に戻り、その後2人が再会した時、野菜づくりの話から、農家が自分たちのやり方で2HJの活動に貢献できるような機会はないだろうか、あるとしたらどのような方法がよいだろうか、という話に発展したのです。

農家は、農作物を育てるために膨大な時間と労力を費やしますが、それは、「親が子供を育て教育するのとよく似ている」と唐沢氏は言います。収穫期の人手不足や気候の変化が災いして、いままでの苦労が台無しになるのを見るのは、とても我慢ができないでしょう。ですから、2HJと協力することは一石二鳥の最善策だと思われました。畑に残された大根を収穫できるだけでなく、新鮮でおいしい大根が加わることで食卓が豊かになると喜んでくれる人たちがいるのですから。

daikon harvesting

参加したボランティアは、疲れと寒さを感じながらも、生き生きとした様子で働いていました。体の芯まで凍えそうな冷たい風に吹き飛ばされた土を全身にかぶっていましたが、東京に戻る前に近くの温泉に立ち寄るという楽しみもありました。畑に入って自分の手で大根を収穫したことで、ひと時であっても都市生活のストレスが解消されたと、みな口をそろえて言います。そしてたとえ数時間でも、甘いいちごや青々とした草原が田舎での生活のすべてではない、というやや驚くべき発見をしたのです。農家の生活はなかなか大変なものです。時には目が見えなくなるほど、そして大量の土や砂を飲みこんでしまうほどの強い風が、私たちに農業の厳しさをも教えてくれたのでした。

daikon harvest volunteers

初めてのイベントは成功に終わり、すべての参加者にとって、有意義で勉強になる、そして何よりも楽しい経験となりました。2HJでは、新たに生まれた農家の方との協力関係を継続し、将来的には、さらにほかの農場とのつながりを築いていくことも視野に入れています。

また、2HJはこのイベントを年2回程度の定期的な活動にしていこうと計画しています。私ももう一度、自分の体を使って働く、貴重な機会を得られることを楽しみにしています。その時には再び、地平線の向こうにそびえ立つ、雪に覆われた北アルプスの広大な景色を眺めることができるかもしれません。そのような日の終わりには、本当に実りの多い1日を過ごすことができたという、滅多にはない穏やかで満足した気持ちをもう一度味わいながら、倒れるように眠りに着くことになるでしょう。

文章・写真:パメラ・ラヴァシィオ

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2007.10.16

受給者紹介 カナン・キリスト教会

日雇い労働者の街の「おいしい」教会

日雇い労働者の街として知られ、簡易宿泊所が立ち並ぶ横浜市中区の寿地区。生活保護を受けるさまざま障害者や高齢者、そして野宿者も多く暮らすこの街に、カナン・キリスト教会はある。ワンルームマンション四部屋をつなげてつくった、ビルの中の教会だ。

目指しているのは「うれしい、楽しい、おいしい教会」と佐藤敏(さとう・さとし)牧師は語る。日曜の礼拝後は出席者にカレーライスを、土曜早朝と木曜昼の路傍伝道集会の後には弁当や給食を、また早朝祈会や夜の伝道集会ごとに出席者におやつを配っている。

「セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)からの食材がなければ、こうした活動はできません。いつも遠くから配達してくださることに感謝の気持ちでいっぱいです」と、佐藤牧師の妻、徐蓮熙(そ・よんひ)牧師は話す。2HJから月に2回、野菜やパン、缶詰などが、また、食品提供企業の一つ、ニチレイからは毎週、冷凍食品が届く。経済的に余裕のない人たちが多い地域だけに、教会に献金できる人は少ない。無料で提供される食品は本当に助かるそうだ。「配達がある日は、今日は何が届くかなあ、って朝からみんな楽しみに待っているんです」と徐牧師は言う。

delicious delivery

もともとは徐牧師と日本にいる韓国人信徒らが、この地域の人々に伝道するために設立した教会。いまでは入り口の看板にある通り、「生きがいを求め夢を見る方、なんだかわからない方、働き疲れた方、傷つきキレちまった方、どんな方も」歓迎している。仕事も、お金も、行き場もなくした人、人生の大半を刑務所で過ごしてきた人もここにやって来る。

「最初は百の説教よりも一つのごはんが目当てで来る人たちがほとんどです。でも、そうして通ってくるうちに傷ついた魂が癒され、救われていく兄弟、姉妹たちを何人も見てきました」と佐藤牧師。路上生活を送っていた人が教会のスタッフになり、やがて「献金をしたいから」と働き始めた例もあるという。

2年前には横浜の地下道で段ボール生活を送っていた夫婦を救い出した。女性は妊娠しており、母子ともに危険な状態にあったが、去年7月、無事女の子を出産。カナン教会にちなんで夏菜子(かなこ)と名づけられた赤ちゃんは、大勢の人たちに見守られてすくすくと育っている。「教会の宝です」と徐牧師。いま夏菜子ちゃん一家3人は同教会で暮らし、野宿者だった父親は市の清掃局の準職員になった。

カナン教会はこの秋から2HJのパントリー(食料倉庫)としての役割も担うことになった。食べものに困り、緊急の食料援助を必要としている人が教会にやって来れば、2HJから預かった食料一式(缶詰や乾麺などの保存食品)を手渡す、地域の窓口になるという。こうした拠点を各地につくりたい、と2HJは考えている。

「精神的にも物質的にも、困っている人を助けるのが教会の役目です。喜んで地域と2HJの仲立ちをしたい」と佐藤牧師は話している。

文:大原悦子 写真・和田裕介

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